【書籍紹介】『とんでもなくおもしろい宇宙』柴田一成

『とんでもなくおもしろい宇宙』柴田一成
地球に滅ぼす規模の大爆発を繰り返す太陽、毎年少しずつ地球に近づく月、宇宙人がいる確率……などなど、知っているようで知らない宇宙の姿を太陽研究の第一人者が楽しく紹介。想像を軽々と超えるおどろきの世界へ!
昨年末には宇宙ステーションに長期滞在していた油井さんの地球帰還や「はやぶさ2」のスイング・バイ成功などで盛り上がった天文界隈、たくさんの方々が宇宙に思いを馳せる機会になったのではないでしょうか。
21世紀の今、天文学は恐ろしいほどの勢いで日々新たな発見、情報の更新が進んでいます。
学生の頃の知識なんてもう古い! のです。
構成のお手伝いをした本書は、京都大学花山天文台台長 柴田一成先生のナビゲートによって最新の知識や情報を得ることができる一冊。専門的な知識も、とても易しく解説してくださっています。
特に皆さんに注目してもらいたいのは、地球温暖化の常識と思われている知識への懐疑的視点と、太陽が現代社会にもたらすかもしれないカタストロフィという二つのトピック。
地球温暖化対策が単なるエコロジーの話ではなく、政治と経済が絡んだとても生臭い話だというのは、近頃では知る人ぞ知る「不都合な真実」ですが、実は多くの科学者が二酸化炭素悪玉説を支持していないのはご存知でしたか?
エレクトロニクス化が高度に進んだ結果、太陽フレアが新たなリスク要因、しかも人間社会に壊滅的な打撃を与えかねない可能性を持つようになったのは?
ともすれば「自分とは関係ない遠い世界」と思われがちな「宇宙」が、実はものすごく身近なリスク・マネジメントに関わる問題である……これを知るだけでも本書を読む価値はあるかも。もちろん、夢とロマンもたっぷり詰まっています。
電子書籍も同時発売ですので、スマフォでもさくっと読んでいただけますよ!
「うらめしや~」展内覧会レポ 続き
さて、第一会場の圓朝に見送られながら第二会場への道をたどると、そこにはちょっとした仕掛けが。
でも、これは自分で発見したほうが楽しいと思うので、ここでは伏せておきますね。ヒントは壁も注視すべし! です。
第二会場は、浮世絵や全生庵コレクション以外の幽霊画の他、圓朝の遺品、能面、落語家の怪談噺で使用されたお面など、バラエティ豊かな展示物が並んでおります。

また、こんなコーナーも。

狭いけれども、一度に10名ぐらいは座れそうなスペースだったので、怪談講談未体験の方には強く視聴をおすすめしたい。貞水さんの四谷怪談はいいですよ~。
さて、第二会場で特に目を引いたのは、落語家の柳亭左龍が四谷怪談上演時に使ったお面二種と月岡芳年の幽霊図「うぶめ」でした。
甚だ不勉強で恥ずかし限りなのですが、落語の四谷怪談でお面を使う演出をしていたというのを、この展示で初めて知りました。
お面といいつつ、すっぽり被るタイプのようで、大きさはきぐるみの頭ぐらいはあります。これが突然わっと出てきたら、そりゃあ肝をつぶすことでしょう。一度、実演を見てみたいのだけど、今もこういう演出をする噺家さんっているんですかね? 現代落語もチェックしなければ……。いやはや、怪談というのは本当に裾野が広いというか、怪談を軸に調べ始めるとありとあらゆる芸能を渡り歩くことになります。全体を把握しようと思っても、なかなか一筋縄ではいかないようです。
芳年の「うぶめ」は、彩度の低い色使いのためか、血まみれの凄艶な女が描かれているにもかかわらず、静謐と悲しみが漂う優品でした。真に優れた絵画は、実物を見ないと真価を感得できないものですが、本品もそういった作品の一つだと思います。百聞は一見にしかず。これを見るためだけでも、足を運ぶ値打ちはありますよ。
今回は前期と後期で展示替えがあるそうです。また、ポスターに使用されている上村松園の代表作「焔」は9月に入ってからしか出品されないとか。内覧会で見ることができなかったのは残念ではあったものの、どうせ東博でやっている「クレオパトラ展」にも行くつもりだから、9月に再訪しようと心に決めたのでした。
期間中には、講演会やナイト・ミュージアム(!)も予定されているそう。詳しくはこちらを→ http://www.tokyo-np.co.jp/event/urameshiya/event.html
幽霊画のナイト・ミュージアム! しかも二度もあって、一度目は圓朝の命日に法要とともに開催、二度目はお能の上演とともに(演目:能「鉄輪」、仕舞「藤戸」、独吟「砧」「葵上」ほか)というのだから、ほんと、今回の企画は見どころたっぷりです。
遠方からお越しの方は、ぜひこういう機会を捉えて、十全に幽霊画の世界を味わい尽されてはいかが?
今夏は(それとも今夏も、というべきか)各地でおばけ関係の展示が盛んですが、やはり真打ちというか、横綱相撲というべき展示でした。満足できますよ!
本日から!「うらめしや~、冥途のみやげ展」
しかし、社会人の端くれとしてそうばかりも言っておられない。
と、いうわけで、行ってきました。
「うらめしや~、冥途のみやげ展」
http://www.tokyo-np.co.jp/event/urameshiya/
会場は東京藝術大学大学美術館 地下2階展示室。
JR上野駅から東京国立博物館方面に上野公園を突っ切って、谷中方面に向かうと、日々時代を担う芸術家たちが研鑽を重ねている東京芸大が見えてきます。
その敷地内にある美術館に、谷中にあるお寺、全生庵のコレクションを中心とした幽霊画などが集められたのです。

公園内にある看板 なんだかすごい取り合わせ……
会場に到着すると、すでに『幽』編集部の面々とライターの朝宮運河さんがいました。先日発売になったばかりの『幽』で、この展覧会とコラボした幽霊画特集をやっているので、私もその御縁で内覧会に呼んでいただいたというわけです。その上、なぜかペラまでいました。どこにでもいるな、このぺらぺら。
ぺらの様子はこちらから→https://twitter.com/perapera_san/status/623450361416691712/photo/1
さて、いよいよ会場がオープンし、地下二階へ。期待に胸が高鳴ります。

入り口からして、主催者の本気が伝わってくるしつらえです。照明はかなり抑えられています。しかも、どこからともなく聞こえてくる風の音……。安達が原に吹く寒風の音でござりましょうや。夏だけど。
第一展示室への導入部は細い廊下のようになっていて、まずは全生庵コレクションの生みの親である三遊亭圓朝を紹介するコーナーが展開されていました。肖像画をはじめ、在りし日の圓朝を偲ぶチラシや番付などが展示されています。中には圓朝自筆の辞世の色紙や扇面なんてものも。
そして、薄墨で描かれた圓朝の影絵に見送られながら薄暗いメイン会場に入っていくと……。
おお! 壁全面、幽霊画一色ではありませんか。圧巻です。しかも、部屋の真ん中には、天井から吊り下げられた蚊帳の下に、香華が手向けられています。まるでお化け屋敷のようです。(香華はこの日、つつがない日程終了を祈念する法要で使われたものであり、普段はないものと思われます)

本展覧会を企画された東京芸大古田准教授のレクチャーによると、光量をあえてギリギリまで落としたのは、幽霊画はやはり薄暮の中で見てこそ、との配慮からだとか。さすが、わかっていらっしゃいます。
正直申しますと、全生庵コレクションはもう何度見たかわからず、ほとんどの幽霊たちとは「やあ、今年も会えましたね」と挨拶する仲ではあるものの、環境が変わるとやはり雰囲気も異なります。全生庵での展示よりも、より「幽霊画」としての味わいが出ているかもしれません。
そして、ひと通り見終わって、第二会場に向かおうとしたところ、通路の奥に彼はいました。
鏑木清方作の圓朝肖像画です。

この絵は、圓朝の肖像として有名なものなので、印刷物では何度も目にしていました。
でも、実物を見るのはこれば初めて。こんなに大きなものだとは思いませんでした。
影となった圓朝が客を幽霊画の世界へと送り出し、気力あふれる肖像画で客を次への間へと送り出す。なんとも粋な演出です。
ということで、全生庵コレクションの間を後にして、第二会場へと足を進めたわけですが……この続きは、また明日。
8/15 お墓参りの後は怪談会へ「ふるさと怪談 at 大阪」
とにかく日本は災害大国なのだと、ニュースで流れる熊野川決壊の映像を見て、もう何度目になるかわからない思いを新たにしました。自然の恵みも恐ろしさも共に知る日本という国、だからこそ怪談が好まれてきたのかもしれません。
私が事務局として関わっている「ふるさと怪談トークライブ」は、2011年の東日本大震災をきっかけに始まったチャリティ・イベントです。最初は、仙台で大変な被害にあった出版社荒蝦夷の支援を目標にしていましたが、翌年以降は文化財レスキュー、そして震災孤児支援と寄付先を変えながらも、一貫して非営利で行ってまいりました。
そして、今年は3月の神戸に続き、8月15日に大阪でも開催できることになりました。現地で旗を振って下さったのは、作家の田辺青蛙さんです。田辺さんにはふるさと怪談一年目から京田辺市での開催にお力添えをいただいてきましたが、今回からは居を構えていらっしゃる大阪で、ということになりました。継続したご支援に感謝申し上げます。また、今回はご縁あって都島区の後援をいただくことになったのも、田辺さんのお口添えあってのこと。重ねて御礼申し上げます。
さて、今回の会場は中之島の中央公会堂になりました。
大正時代に建てられた、赤レンガの美しい西洋建築は、大阪の人間にとっては大阪城や通天閣に並んで親しみのあるランドマークです。こんな伝統ある、素敵な場所で開くふるさと怪談、ゲストは新耳袋の中山市朗さんとホラー作家の牧野修さんのお二方がすでに決定しておりまして、かなり濃い大阪怪談談義が聞けるのではないかと、私も楽しみに思っております。
また、私の方からは、四年目の被災地の現状について、当地で語られ始めている「怪談」を含めてご報告する予定です。
なにやら世間は騒がしく、震災の記憶は日々薄れていくようですが、被災地ではまだまだ生々しい現実です。悲しみ、そして無念も色濃く残っております。 しかし、そうした感情を昇華するかのように、そして死んでいった人たちを忘れないとの決心を示すかのように、現地において泉のごとく溢れだしている怪談の数々。そこに怪談の原点があるのではないだろうかと、今年3月11日に訪れたある町で感じました。その辺りのことも含めてお話できればと思っております。
お盆のさなかではありますが、お墓参りに行った後、お時間があれば中之島にまでお運び下さい。
【日時】 2015年8月15日(土) 開場 18:30 開演 19:00
【場所】 大阪市中央公会堂 大会議室
くわしくは公式ホームページでご確認下さい。
http://hurusatokwaidan.web.fc2.com/2015osaka.html