なんだかバタバタしていたら七月もすでに終盤……。本当に月日の経つのは早いです。
いよいよ夏本番ですね。毎日暑いですが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。
私はすでに夏ばてしています
ほんと、暑いの苦手なんです……。
やっぱりこう言う時こそ怪談ですよ、怪談! 私的には妖怪はお彼岸ころ、怪談はお盆ごろ、ホラーは年の瀬というのがベストシーズンなんです。(自分でも若干意味不明ですが、分析するに妖怪巡りには春秋、怪談を読み聞きするには夏、ホラー映画を見るには冬ということでしょうか)
ありがたいことに今年もたくさんの読むべき怪談がリリースされております。まずは読んだものからご紹介を。
私にとってこの夏一番の収穫は、東雅夫さんの『文豪怪談傑作選 特別編 文藝怪談実話』です。
各界の著名人が発表した怪異実体験談がこれでもかこれでもかと詰め込まれたこの一冊。巻末の初出一覧を見て、もう感銘を受けるほかありませんでした。アンソロジストとしての本領発揮というか、よくもまあこんなところ(どんなところかは初出をご覧あれ)に掲載されているものまでご存じなものです。
読んでいておもしろいなと思ったのが、ほとんどの方々が「私は霊なんぞ信じていなかったが……」的なエクスキューズをつけて語っていらっしゃるところ。霊の存在を全肯定することには躊躇しつつ、だが自分の体験を解釈するには「霊」の実在をもってするしかない、という葛藤が感じられて、今も変わらぬ人情だなあと微笑ましく思いました。
また、本書の圧巻は田中河内介に関する記述をまとめた一章です。田中河内介の因縁話はいわゆる「実話怪談」としては珍しく起った場所も時間も目撃者もはっきりしています。それにも関わらず、よくもまあこれだけバリエーションがあるなあ、と。人間の認識なんて実に当てにならないものですね。だからこそ、怖さが潜む余地があるのかもしれませんが。
毎回楽しみにしている文豪怪談傑作選シリーズですが、その中でも白眉の一冊なのではないかと、僭越ながら思った次第です。
次は実話繋がりで福澤徹三さんの『いわくつき日本怪奇物件』を。
私が福澤さんの実話怪談が好きな理由、それは「煽る書き方」をなさらないところにあります。あくまでも「体験したのではなく、聞いた話である」ということを前提に、いわば記録者としての視点を常に堅持されているように感じるのです。怪談というと「怖がらせてやろう」とするあまり、えらく力が入った文章になってしまいがちですが、私が好きなタイプの実話系の怪談は「こういう話を聞きました。私は怖いと思ったんですが、どうでしょうか?」ぐらいのスタンスで書かれたもの。そういう意味で、福澤さんのお書きになるものの温度は、私にとって一番心地よく感じる頃合いなんだと思います。
途中数カ所に挟まれているいわゆる「心霊スポット」の写真、これはあそこだよな、とか、これはどこだろう? とか思いながら見るのもまた楽しいのではないでしょうか。
ちょうど「実話系」という言葉を出しましたので、次はそれがそのままずばり書名になっている本のご紹介を。
あまりにまんまのタイトルで、最初に見た時にはびっくりしたのですが(笑)。
これ以上ないのではないかと思うぐらい豪華なメンバーを集めた「実話系」怪談の競作集です。私はこの一冊で、「実話」といっても多彩なアプローチがあるんだってことを改めて認識させられました。同じシリーズばかり読んでいると、ついついジャンルへの認識も偏古になってしまいますが、こうやって各ジャンルのみなさん(しかも一流どころばかり)が出そろったものを読むと、そういうのも解消しますね。ものすごくお買い得な福袋のような一冊でした。
この『怪談実話系』は、ダ・ヴィンチ文庫の創刊ラインナップの一冊だったのですが、同時に水沫流人さんの『マリオのUFO』と宇佐美まことさんの『虹色の童話』も発売されました。
まず、水沫さんの『マリオのUFO』から。
読後、ちょっと感動を押さえきれませんでした。水沫ワールドここに完成、だなと思って。
まず文学作品として素晴らしい。純文学の人たちは、どうしてこれに注目しないのですか? こういう作品を発掘してこそ、読書の喜びだと思うのですが。
少年の目線で描かれた異国の社会は、リアリティとファンタジーがないまぜになったような、なんともユニークな世界です。子供が叙述しているからでしょうか、生も死も日々の営みも、どこか幻灯のような頼りなさを漂わせています。行間から立ち上ってくる、名づけがたい空気感。きっとこれは、私がまだ体験したことのないブラジルの街の空気なのでしょう。表題作「マリオのUFO」もよいですが、私は併録の「リオ・ブランコ」に特に強く惹かれました。ついつい、何度も読んでしまいます。
ストーリー運びに頼らない、小説を構成する一切が渾然一体となって文学に昇華するこの感覚。久しく味わえなかった「文学を読む楽しさ」を味わわせていただきました。
一方、宇佐美さんの『虹色の童話』は初の長編。そして、ものすごく正統派の怪談になっています。
人が生きていく上で不可避な感情の澱が、臨界点を超えた時に発動する怪異。ああ、人間って、なんて業の深い生き物なんでしょう。極端な悪人もいない代わりに、根っから善良な人間もいない宇佐美さんの小説世界。これが、人を描くリアルってもんなのだと思います。
その人間存在のいやらしさを、抑えた筆致と巧みな伏線で書ききったこの作品。毎回同じ事を言うようで恐縮ですが、これこそまさに「大人の怪談」です。生活者じゃなきゃ書けない怪談です。だから、怖いのです。読後に思ったのですが、宇佐美さんの世界が、実は一番江戸怪談の世界に近いのではないかなという気がしています。これからも楽しみです。
ところで、最近の若い人は怪談というともひとつピンと来ないけど、「都市伝説」っていうと喰いつきがいいそうで(笑)。
またまた出ました、黒史郎さんの新作。今度は講談社から、ハードカバーです。
まずは帯文のかっこよさに感動。
「見逃すな! このB(ババア)は音速だ!」 by平山夢明
……この帯文が音速です(笑)。
そして、本の内容。たしかに、ものすごく青春小説でした。そして、ものすごく黒さんでした!
たぶん、デビュー前にWEB上で発表されていた作品のテイストに一番近い小説になっているんではないか、と黒ウォッチャーである私は思います。
毎回「とりあえずさわりだけ読もう……」と読み始めると、知らん間に最後まで読まされるはめになるわけですが、本書もその例外ではなく。エンターティメント小説の王道です。そして、黒鶴見とでもいうべきこの街に仕掛けられた色んなトラップ。これ、今後も別の作品なんかで出てくるんじゃないかな?
優れたエンターティメント作家は、ほとんどの方が壮大なインナーワールドを持っていらっしゃいますが、黒さんの鶴見(だから黒鶴見と勝手に呼んでます)も、発現の場を得て、これからどんどん増殖していくんではないかなー、と。この作品が『楽園都市』書籍化のマイルストーンであることを願って。
ああ、ここまでで盛りだくさんになってしまいました。
今日の所は、これにてひとまず。でも、まだまだご紹介したい本は山ほどあります。近日中にアップしますので、ご期待下さい。
いよいよ夏本番ですね。毎日暑いですが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。
私はすでに夏ばてしています
ほんと、暑いの苦手なんです……。やっぱりこう言う時こそ怪談ですよ、怪談! 私的には妖怪はお彼岸ころ、怪談はお盆ごろ、ホラーは年の瀬というのがベストシーズンなんです。(自分でも若干意味不明ですが、分析するに妖怪巡りには春秋、怪談を読み聞きするには夏、ホラー映画を見るには冬ということでしょうか)
ありがたいことに今年もたくさんの読むべき怪談がリリースされております。まずは読んだものからご紹介を。
私にとってこの夏一番の収穫は、東雅夫さんの『文豪怪談傑作選 特別編 文藝怪談実話』です。
![]() | 文藝怪談実話 (ちくま文庫 ふ 36-8 文豪怪談傑作選 特別篇) (2008/07/09) 遠藤 周作 商品詳細を見る |
各界の著名人が発表した怪異実体験談がこれでもかこれでもかと詰め込まれたこの一冊。巻末の初出一覧を見て、もう感銘を受けるほかありませんでした。アンソロジストとしての本領発揮というか、よくもまあこんなところ(どんなところかは初出をご覧あれ)に掲載されているものまでご存じなものです。
読んでいておもしろいなと思ったのが、ほとんどの方々が「私は霊なんぞ信じていなかったが……」的なエクスキューズをつけて語っていらっしゃるところ。霊の存在を全肯定することには躊躇しつつ、だが自分の体験を解釈するには「霊」の実在をもってするしかない、という葛藤が感じられて、今も変わらぬ人情だなあと微笑ましく思いました。
また、本書の圧巻は田中河内介に関する記述をまとめた一章です。田中河内介の因縁話はいわゆる「実話怪談」としては珍しく起った場所も時間も目撃者もはっきりしています。それにも関わらず、よくもまあこれだけバリエーションがあるなあ、と。人間の認識なんて実に当てにならないものですね。だからこそ、怖さが潜む余地があるのかもしれませんが。
毎回楽しみにしている文豪怪談傑作選シリーズですが、その中でも白眉の一冊なのではないかと、僭越ながら思った次第です。
次は実話繋がりで福澤徹三さんの『いわくつき日本怪奇物件』を。
![]() | いわくつき日本怪奇物件 (ハルキ・ホラー文庫 ふ 1-2) (2008/07) 福澤 徹三 商品詳細を見る |
私が福澤さんの実話怪談が好きな理由、それは「煽る書き方」をなさらないところにあります。あくまでも「体験したのではなく、聞いた話である」ということを前提に、いわば記録者としての視点を常に堅持されているように感じるのです。怪談というと「怖がらせてやろう」とするあまり、えらく力が入った文章になってしまいがちですが、私が好きなタイプの実話系の怪談は「こういう話を聞きました。私は怖いと思ったんですが、どうでしょうか?」ぐらいのスタンスで書かれたもの。そういう意味で、福澤さんのお書きになるものの温度は、私にとって一番心地よく感じる頃合いなんだと思います。
途中数カ所に挟まれているいわゆる「心霊スポット」の写真、これはあそこだよな、とか、これはどこだろう? とか思いながら見るのもまた楽しいのではないでしょうか。
ちょうど「実話系」という言葉を出しましたので、次はそれがそのままずばり書名になっている本のご紹介を。
![]() | 〔MF文庫 ダ・ヴィンチ〕怪談実話系 書き下ろし怪談文芸競作集 (MF文庫 ダ・ヴィンチ ゆ 1-1) (2008/06/21) 安曇潤平、岩井志麻子、加門七海、木原浩勝、京極夏彦、小池壮彦、立原透耶、中山市朗、平山夢明、福澤徹三 商品詳細を見る |
あまりにまんまのタイトルで、最初に見た時にはびっくりしたのですが(笑)。
これ以上ないのではないかと思うぐらい豪華なメンバーを集めた「実話系」怪談の競作集です。私はこの一冊で、「実話」といっても多彩なアプローチがあるんだってことを改めて認識させられました。同じシリーズばかり読んでいると、ついついジャンルへの認識も偏古になってしまいますが、こうやって各ジャンルのみなさん(しかも一流どころばかり)が出そろったものを読むと、そういうのも解消しますね。ものすごくお買い得な福袋のような一冊でした。
この『怪談実話系』は、ダ・ヴィンチ文庫の創刊ラインナップの一冊だったのですが、同時に水沫流人さんの『マリオのUFO』と宇佐美まことさんの『虹色の童話』も発売されました。
まず、水沫さんの『マリオのUFO』から。
![]() | 〔MF文庫 ダ・ヴィンチ〕マリオのUFO (MF文庫 ダ・ヴィンチ み 1-1) (2008/06/21) 水沫流人 商品詳細を見る |
読後、ちょっと感動を押さえきれませんでした。水沫ワールドここに完成、だなと思って。
まず文学作品として素晴らしい。純文学の人たちは、どうしてこれに注目しないのですか? こういう作品を発掘してこそ、読書の喜びだと思うのですが。
少年の目線で描かれた異国の社会は、リアリティとファンタジーがないまぜになったような、なんともユニークな世界です。子供が叙述しているからでしょうか、生も死も日々の営みも、どこか幻灯のような頼りなさを漂わせています。行間から立ち上ってくる、名づけがたい空気感。きっとこれは、私がまだ体験したことのないブラジルの街の空気なのでしょう。表題作「マリオのUFO」もよいですが、私は併録の「リオ・ブランコ」に特に強く惹かれました。ついつい、何度も読んでしまいます。
ストーリー運びに頼らない、小説を構成する一切が渾然一体となって文学に昇華するこの感覚。久しく味わえなかった「文学を読む楽しさ」を味わわせていただきました。
![]() | 〔MF文庫 ダ・ヴィンチ〕虹色の童話 (MF文庫 ダ・ヴィンチ う 1-1) (2008/06/21) 宇佐美まこと 商品詳細を見る |
一方、宇佐美さんの『虹色の童話』は初の長編。そして、ものすごく正統派の怪談になっています。
人が生きていく上で不可避な感情の澱が、臨界点を超えた時に発動する怪異。ああ、人間って、なんて業の深い生き物なんでしょう。極端な悪人もいない代わりに、根っから善良な人間もいない宇佐美さんの小説世界。これが、人を描くリアルってもんなのだと思います。
その人間存在のいやらしさを、抑えた筆致と巧みな伏線で書ききったこの作品。毎回同じ事を言うようで恐縮ですが、これこそまさに「大人の怪談」です。生活者じゃなきゃ書けない怪談です。だから、怖いのです。読後に思ったのですが、宇佐美さんの世界が、実は一番江戸怪談の世界に近いのではないかなという気がしています。これからも楽しみです。
ところで、最近の若い人は怪談というともひとつピンと来ないけど、「都市伝説」っていうと喰いつきがいいそうで(笑)。
![]() | 100KB[キロババア]を追いかけろ (2008/07/11) 黒 史郎 商品詳細を見る |
またまた出ました、黒史郎さんの新作。今度は講談社から、ハードカバーです。
まずは帯文のかっこよさに感動。
「見逃すな! このB(ババア)は音速だ!」 by平山夢明
……この帯文が音速です(笑)。
そして、本の内容。たしかに、ものすごく青春小説でした。そして、ものすごく黒さんでした!
たぶん、デビュー前にWEB上で発表されていた作品のテイストに一番近い小説になっているんではないか、と黒ウォッチャーである私は思います。
毎回「とりあえずさわりだけ読もう……」と読み始めると、知らん間に最後まで読まされるはめになるわけですが、本書もその例外ではなく。エンターティメント小説の王道です。そして、黒鶴見とでもいうべきこの街に仕掛けられた色んなトラップ。これ、今後も別の作品なんかで出てくるんじゃないかな?
優れたエンターティメント作家は、ほとんどの方が壮大なインナーワールドを持っていらっしゃいますが、黒さんの鶴見(だから黒鶴見と勝手に呼んでます)も、発現の場を得て、これからどんどん増殖していくんではないかなー、と。この作品が『楽園都市』書籍化のマイルストーンであることを願って。
ああ、ここまでで盛りだくさんになってしまいました。
今日の所は、これにてひとまず。でも、まだまだご紹介したい本は山ほどあります。近日中にアップしますので、ご期待下さい。







![100KB[キロババア]を追いかけろ](http://ecx.images-amazon.com/images/I/6159XDoqP3L._SL160_.jpg)

)
![サイゾー 2008年 08月号 [雑誌]](http://www.cyzo.com/images/hyoushi0808.jpg)



![ダ・ヴィンチ 2008年 08月号 [雑誌]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51dp3tRkMAL._SL160_.jpg)








