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『金色機械』恒川光太郎


金色機械金色機械
(2013/10/09)
恒川 光太郎

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 昨年10月に出ていた恒川光太郎の新刊をようやく読むことができた。 
 物語作家として一皮剥けたのではないか。口幅ったいことをいうようだが、一読後、最初に去来した感想はそれである。

 話を要約すると、月からやってきたという言い伝えを持つ一族とその一族に関わる人々の、室町時代から江戸時代にかけての年代記を多視点で描いたSFファンタジー時代小説、といったところだろうか。
 のっけから、人の心を象徴的な映像で読み取る遊郭の主と、撫でるだけで生き物を安楽死させることができる女など、異能者たちが登場する。
 続いては神秘的な族長に守られた排他的な村や、族長一族に仕えるアンドロイドのような存在「金色様」が出てくる。オーソドックスなSF的人物がずらりと並ぶのだ。

 一方、舞台となるのはならず者どもが巣食う山城や棄民たちの隠れ里、流れ者が集う河原など、これまた時代物伝奇小説の定番ともいえる設定。
 ある意味、よく見る設定を使うだけ使って……どうしてここまで美しい、そう、まさに「美しい」としかいえない物語が生まれるのだろうか。

 恒川小説の醍醐味が、日常的な言葉のみで鮮やかな情景を描いてみせるあの独特の文体にあるのは言うまでもない。
 たとえば、冒頭部分に出てくるこんな一節。

「川沿い一体の大遊郭は<舞柳>と呼ばれている。風が吹くと、柳が踊る。」

 妓楼の華やかさと儚さ、そして底に潜む寂寞が「風が吹くと、柳が踊る。」という一文だけで伝わってくる。こうした文章の積み重ねが、いわく言いがたい雰囲気を持つ文体となり、それが読者の心を捉える。
 読者が受ける刺激は、良質な散文詩を読む時のそれに近い。
 この特性は、文体より物語性を重視する向きには「敷居の高さ」として認識されるきらいがあった。
 だが、今回の作品では一人の女性の半生を主軸に置き、金色様を狂言回しに、そして謎解き的な要素を加えることによって、わくわくするような筋運びになっている。同時に、従来の美質も損なわれていない。
 
 恒川小説はタペストリーのようだ。
 色糸の交錯が、離れて見るとめくるめく光景を作る。
 天来の技巧が生むアルカディアの風景。今回は、そこに動きが加わった。絵画鑑賞と映画鑑賞の層の厚さの差を考えてみれば、それが新たな読者を獲得する妙手であることは間違いないだろう。

 熱烈なファンの一人として、多くの読者に本作を読んで欲しいと思っている。
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