2017-10

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女の「価値」とそれに連なる諸々(1)

 昨日は花房観音さんの新刊『楽園』に関する記事をアップしましたが、本の紹介に終始したので、本日は読みながら思ったことなどを、少し。

 花房さんは、今回の作品で、女としての現役終了を言い渡されそうになっている世代が、今更のように慌て始める姿を、いくつかのパターンで描き出しました。

 昨日のエントリにも書いたように、冴えない女が狂い咲きを始めたのを目の当たりにした女たちが、知らず知らずに封印していた「女としての人生」があることを思い出すことで、錆び付いていた歯車が回り始めるのですが、その過程で彼女らに去来する思考が非常におもしろい。

 たとえば、本来なら小金持ちサラリーマンの幸せな奥様としての人生が待っているはず温井朝乃は、夫が独立して始めた事業の失敗で平均ちょっと下のパート人生を送ることになってしまいます。
 それでも、給料はちゃんと入れる夫と二人の子供をそれなりに独立させた事実を盾に、世間並みの幸せは保っていると自分に言い聞かせ、なんとか精神の均衡を保っていました。
 ところが、夫を失うことで自分より不幸になったはずのみつ子が、みっともない姿とはいえ新しい人生を謳歌しているのを見て心が揺さぶられます。

 あれ、あの人、私より不幸なはずなのに、なんで楽しそうなの?

「世間並み」を幸福のメルクマールにしてきた人にとって、世間並みを満たす要素を欠いている人が幸せに見えるほど不安で不快なことはないでしょうね。
 しかも、朝乃は気づいてしまうのです。今の自分は誰にも女として見てもらえるような存在ではなくなっていることに。
 過去のこと……主に夫の自分に対する振る舞いを回想する朝乃への、花房さんの筆はそれはもう容赦無い。
 せっかく、自己啓発系のお軽いポジティブ・シンキングとプチ・スピリチュアルによって閉じ込めていたドロドロの思いを、あっさり引っ張りだしてしまうのですから。

 あらまあ、かわいそうに。
 そう思いながら、彼女の狼狽を鼻で笑ってしまう私がいました。
 欺瞞に満ちた人生を送っていたくせに、ここに至って被害者面とは厚かましい。そう思ったのですね。
 彼女は自分の家族は「いい家族」だと思っている。
 だが、内実はどうか。
 子供は別段親孝行でもなく、夫は外で浮気している。おそらく、朝乃が自分で思っているほどには、彼女は家族に必要とされていない。
 母としての役割はすでに終わった。小遣い用ATMとして以外、子供は朝乃を必要としていない。
 夫は家政婦兼稼ぎ手としては必要としているだろうが、女としては終わった存在だと見ている。ようするに便利な同居人です。
 
 よくある話ですよね。ほんと、ごまんとある話。だから、多くの女性は見ないことにしている。アイデンティティを脅かす事実に真っ向から向かい合うなんて物好きな哲学者がやってればいいことですから。
 でも、花房さんは、そこを突いていきます。

 そして、罠を仕掛けます。強烈なフェロモンを漂わせる若い雄という罠を。

 さて、「平凡だけれども幸せな(はずの)主婦」はどうでるか。

 それは読んでのお楽しみですが、朝乃は実におもしろい反応を示しました。結局、朝乃はバカにしていたみつ子より、もっとバカだったとしか私には思えません。

 ただ、朝乃に対する冷笑は、自分の中のある場所を刺激する結果にもなるのでほどほどにしておいたほうがよさそう。

 ……なにやら、思ったよりこのエントリは長くなりそうです。続きは、また明日。


楽園楽園
(2014/04/09)
花房 観音

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門賀美央子

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