2017-08

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女の「価値」とそれに連なる諸々(3)

 このエントリは続きものですので、読まれる場合は下記からお目通しくだされば幸甚です。

「花房観音『楽園』」
http://mongamioko.blog36.fc2.com/blog-entry-339.html

「女の「価値」とそれに連なる諸々(1)」
http://mongamioko.blog36.fc2.com/blog-entry-340.html

「女の「価値」とそれに連なる諸々(2)」
http://mongamioko.blog36.fc2.com/blog-entry-341.html

 ネットスラングにスペックという言葉がありますね。仕様書という意味の英語が和製英語として「性能」を指すようになり、そこから意味が転化して個人のプロフィールというか社会的な記号というか、そういうものを指すようになった。
 匿名掲示板などで「私のスペックは20歳、顔はまあまあで~」みたいな使い方をするみたいです。

 そういう意味でのスペックが私と一番近いのが三人目の寺嶋蘭子(42)。
 同い年で独身、しかも安定しない仕事(蘭子は派遣社員、私は自由業)。まあ、彼女はなかなか美人な上におしゃれさんなのでそこは違うけど。
 でも一番違うのは、彼女はバツイチであるということ。一度は戸籍を汚しているわけです。まあ、羨ましい。
 ……などと蘭子に言おうものならきっと激怒されることでしょう。
 不幸な結果に終わったこの結婚が、彼女に癒えない傷を与えているからです。

 「蘭子はあることがきっかけで、女としての自身を喪失し、男の人とつきあうことが怖くなったまま、四十の坂を超えてしまった。」

 でも、外側から見れば、彼女はまだ「女としての価値」があると思われる程度の容姿を保っています。そりゃあピチピチの女の子というわけではないけれども、熟女系の風俗なら充分「商品」になる。そんな「スペック」の持ち主なのに、離婚後十数年間、一度も男性と関係を持つことがなかった。その理由は……ここでは書きますまい。
 ですが、その事実への不安や焦りを、変貌したみつ子が掻き立てます。
 この不安や焦りは、彼女が無神経な前夫から心の傷を負わされなければ生まれなかったはず。花房さんは、この作品で女の愚かさを書くと同時に、男のクズさを余すことなく書いています。
 身勝手で、思いやりのない男たち。読みながら、「ああ、いるいる。こういう男」と何度思ったことか。

 だけど、蘭子を見ていると思うのです。
 やっぱり、貴女は弱すぎるよ、と。
 一番スペックが近いのに共感できないのは、彼女の心の弱さに今ひとつ納得がいかなかったからでした。というよりも、夫に投げつけられた言葉にしがみついたのは、むしろ彼女だったのではないかと思うのです。
 蘭子は、離婚の原因を「性の不一致」と考えています。なるほど、それは間違ってはいないのでしょう。ですが、それだけだったのかというと……。夫側から離婚劇を語らせれば、また違う景色が見えてくるんじゃないかな。
 人間、人生で何か失敗した時に、ひとつの原因にすべてをおっ被せると楽ですよね。でも、大抵の場合、原因なんて複合的なものです。また、自分ではここが嫌われたと思っても、案外相手は他の部分で愛想を尽かしていたなんでこともあります。でも、いちいち自分のどこが悪かったかを突き詰めて考えていたら、もう自己嫌悪の塊になってしまう。だったら、一事を諸悪の根源にしてしまったほうが楽です。「傷ついた一言」を彼女は致命的な毒と思っているけれども、本当は彼女を支える支え棒になっているのかもしれない。だって、これが外れた時、彼女は……。

 蘭子は、ずっと王子様を待ち続けました。四十になっても、崖っぷちから救ってくれる誰かが来ると心のどこかで思っている。自分では登ろうともしないで。それはつまり依頼心であり、人としての弱さだと私は思うのです。彼女は確かに苦しんでいるのでしょう。でも、苦しんでいることを免罪符に人生サボっているような気がする。
 もちろん、誰もが強くあれるわけではありません。だけど、彼女にはポテンシャルがある、はず。それを生かさないのは、やっぱり甘えなんですよ。人に頼るほうが、そりゃ楽ですもの。
 蘭子の向こう側には、芥川龍之介の「六の宮の姫君」が見えるような、そんな気がしました。

 とはいえ、蘭子に王子様がやってこないかというと……まあ、そこは読んでみてください。
 ただ、ある意味、この作品に出てくる女達の中で、一番救いのないのが彼女かなあ。六の宮の姫君と同じような末路を辿りそうで……。
 そうなってしまうのは、彼女自身のせいだと思うんですけどね。

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門賀美央子

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