2017-06

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『幽』21号 お薦めページ

 昨日は下記のエントリで発売されたばかりの『幽』21号で私が関わった記事&企画を御紹介しました。

 http://mongamioko.blog36.fc2.com/blog-entry-349.html

 本日は私のお薦めを御紹介したいと思います。

 まず小説から。
 有栖川有栖さんの連載が始まりました。「濱地健三郎の事件簿1 見知らぬ女」とのタイトルからわかるように、ミステリです。だけど怪談。
 新宿の外れにある、知る人ぞ知る「濱地探偵事務所」に持ち込まれるのは心霊が関係する事件ばかり。今回は、作家である夫の急激な衰弱の原因を女の霊とみた妻が相談に訪れます。果たして、夫は本当に霊に取り憑かれているのか、それとも……。
 心霊探偵ものにはいくつかの先例がありますが、本格ミステリの第一人者である有栖川さんが今後どのような怪談ミステリの世界を構築されるのか、興味深いところです。
 
 他にも連載陣がそれぞれ力作を寄稿されている中で、圧巻は小野不由美さんの「営繕かるかや怪異譚 檻の外」でした。
 最低な夫と離婚の末、尾羽打ち枯らして故郷に戻ったシングルマザー・麻美に両親が用意した家は親族所有の古い一軒家。格安の家賃で借りられたのは親族ゆえの心遣い……ではなく、ある事情があってのことだったのを、麻美は昔の男友達から知らされます。
 その話を聞いて麻美は合点がいくのです。ガレージで起こる怪異の正体に。
 ひたひたと迫るような恐怖を描く手腕には定評のある小野さんですから、怪談としての怖さはそれはもう保証付きです。しかし、それだけでなく、とても現代的な問題がさりげなく織り込まれている点、そして麻美が母であるがゆえの選択など、人間というものが短い物語の中にぎゅっと凝縮されている。見事な短篇です。読後、満足のため息がこぼれました。「営繕かるかや怪異譚」のベスト・エピソードというだけでなく、近年まれに見る収穫であると思います。すばらしいです。怪談に偏見がある方にこそ読んでもらいたいような一篇でした。

 個人的な好みとして恒川光太郎さんの「カイムルとラートリー」が印象に残りました。恒川さんの小説を読むと、いつも神話を織り込んだタペストリーを目前に広げられたような、そんな気分に襲われるのです。やっぱりツボだわ。
 
 次は怪談実話。
 今号はもう松村進吉さんの「セメント怪談稼業」が一押しです。怪談実話私小説という新しいジャンルを開拓したのではないだろうか、松村さん。松村さんの怪談に伏流としてあった一人称の叙情性が、今回ようやく地上に顔を表したというか。新耳や超怖の呪縛を完全にふりきった怪談実話を読めて、私は幸せです。

 工藤美代子さんの「日々続々怪談」はファミリー・ヒストリーという類いのもので、特に怖がらせる意図など全くなく、過ぎ去った日々の思い出を淡々と書いていらっしゃるわけですが、なぜか鬼気迫る怪談になっている。これは工藤さんじゃないと書けないものなのでしょう。

 長らく客観が中心だった怪談実話の世界に、主観を入れることで作品世界が一階層上がることを示すお手本のような二本が同時に掲載されたのは、新たな潮流が生まれる兆しのように思えます。

 円城塔さんの翻訳「ミミ・ナシ・ホーイチ」は、本文もさることながら、御本人よる解説を興味深く読みました。英語の原文でないと(というか日本語がわからないと)理解できないラフカディオ・ハーンの企みがあることの指摘には大いに蒙を啓かれましたね。無謀を承知で原文で読んでみたくなりました。

 以上、門賀的今号のお薦めでした。
 
 え、河童釣り企画? ……ノー・コメントということで(笑)。でも加門七海さんのレポート記事はすごくおもしろかったですよ。


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名前 : 門賀美央子
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